シャープニング(刃物砥ぎ)の必要性
安物買いの銭失いかも?
「ウッドターニング」を始めたのは40歳になってからですから今からもう14年前になります。長女は今春、社会人となって働くようになりましたが、彼女がまだ小学校に入学する前で、学習家具を買ってやるより、手づくりで椅子や机をプレゼントしてやろうかと「趣味の木工旋盤」を始めました。現在は廃刊になりましたが、当時は趣味の木工雑誌が数誌あって、手づくり木工事典という季刊のアマチュア木工家向けの雑誌で推薦されていた木工旋盤と、アクセサリーの刃物8本セット、旋盤用スタンドを買いました。3点で合計約10万円で、代金先払いし商品は半年たって届きました。8本1万円という刃物は当時でも廉すぎる印象でしたが、ほかに選択肢もなありませんでした。現在私が販売しているイギリスのハムレット社の刃物(高速度鋼、ハイス、HSS,M2材、普及品)は1本当たり5千円ほどです。
30分で切れ止む!?
初めて削ったのは栗の角材で、机の脚の部分でした。1本目より2本目、2本目より3本目は上手くいくと思っていたのですが、刃物が切れなくなるからでしょうか、材木が緻密でないからでしょうか、切削面はむしれるようになり、「こりゃ、だめだ!俺は何にも知らないんだ!」と気づきました。ハイス材という触れこみでしたがもう少し低級な合金鋼という種類でした。ウッドターニング初心者の多くが現在でも理解しないのはシャープニング(刃物砥ぎ)の重要性でしょう。連続使用で切れなくなる時間は想像以上に短いのです。ハガネで5分間、ハイス(HSS,高速度鋼)の普及品(イギリスのM2材)では30分間です。ハイスの高級品(ASP2060材)でもM2材の4倍程度ですからせいぜい2時間が限度です。1日に何回も刃物を砥ぐ必要があることを分かっていても、実行しないから進歩しないのかもしれません。砥がないで済む刃物も昨年販売が始まりました。アメリカ製でシーアイワン(12,600円)という刃物は替刃式で耐久性抜群のカーバイド材で、1枚1,500円(R4)の替刃で20個の作品が削れるほどです。切れる刃物というのはなんて素晴らしいかを再発見させてくれました。後述するスクレーパーではなくチゼル(chisel,ノミ)や鉋(planer,カンナ)に相当する刃物です。21世紀まで生き延びて良かったって感じです。
ヒゲのような切れ刃?
初めて砥いだのはスクレイパー(scraper,掻き落とす道具の意味)で、一番簡単に砥げる刃物でした。刃物といっても刃物らしくない形状で、顔に生えるヒゲのような「カエリ」(英語でいうとbarr;日本語でもバリと云って分かる場合があるが、辞書には普通載っていない)が切れ刃になって木の表面を掃くように剥く軽切削に適し、切れ刃は摩擦熱や衝撃ですぐ摩滅してしまうため、重切削の粗削りには不適な刃物です。カエリを生成するにはいろいろな方法がありますが、両頭グラインダー(bench grinder)で旋回する研削砥石(grinding wheel)に刃物台上で板状の刃物の上端面を削ると砥石の粒で押しつぶされて硬くなったヒゲ状の切れ刃が発生します。

