木工旋盤同好会通信

2009年08月

木工旋盤同好会通信トップへもどる

2009年08月25日

仕上げ削り・・・シアー・スクレーピング

 初心者が削るのを観察していると、はじめはおっかなびっくりでちょっとづつしか削りません。しだいに慣れてくると大胆すぎるほど荒々しくなり、削っているのが木であることや刃物がまだ切れているのか、切れ止んでいるのかも気が付かないまま、上手く削れない部分があれば底が薄くなって抜けるまで攻めています。確かに、無我夢中になって削っているのはおもしろいと思いますが、これで満足でしょうか?希望する形や厚さに削ることや、刃物だけで納得できるほど木の表面をきれいに削る技術・・・それが仕上げ削り(シアー・スクレーピング)です。素人でもできることですので、普及させたいと思います。

 通常のスクレーパーが刃物を直線刃物台にベタに載せて削るのに対し、シアー・スクレーピングをするには向って左側のコーナー部のみを刃物台に載せ、水平より30~60度傾けて、刃物台に接している側半分の切れ刃(細かいカエリ)で木表面の小波の頂点のような高い部分を角度をそのままに移動しながら除去します。糸状のくるくる丸まった切り屑が出るのが特徴で、これは木端を削った場合も木口を削った場合も同様の切り屑になります。商品としては、ハムレット社HCT416、BCT社スーパーカットやそのジュニア・シリーズが日本で好評です。

2009年08月24日

ガウジを苦手にしない工夫

 十四年前はスクレーパーが素人にとって主要な刃物でしたが、木と刃物の接触がガツン・ガツンと不快で粗削りを改善したいと思いました。また、仕上げ削りでも木端はキレイに削れても木口は上手く切れないのでサンデング(紙ヤスリで磨く。ペーパーがけをする修正)手間が大変でした。木を削る楽しさの後に、切削不良を修正するために粉だらけになる不愉快さが待っている状況でした。当時はリチャード・ラファンやデル・スタッブズといった先人たちのVHSビデオが発売されていて、テープが擦り切れるほど繰り返し見ました。ビデオではスクレーパー(平らな刃物の先端にヒゲ状のカエリを立てて刃物にしている)ではなくガウジ(丸棒に溝を掘った刃物。板を曲げた刃物もある)やチゼル(平らな板を両面から砥いで刃物にしている)を活用していて、本格的なウッドターニングにはガウジやスキュー・チゼル(先端が斜めになっているチゼルの意味)を活用するのが定石だと分かっても、砥ぎ方や使い方の理屈が一向に分からないので、突然に刃物が自分の意思と違って木に食い込んでしまうキャッチと呼ぶ事故に遭遇し、もうすぐ削り終えるというところでガウジやスキュー・チゼルの使用を敬遠したり、本来の使い方と違う砥ぎ方や使い方で苦手にしていました。

  刃物は適切に砥げているか? 
 1999年(10年前)にアメリカのグレーザー社のボウル・ガウジ(bowl gouge,deep flute gouge)を入手したのをきっかけに苦手の克服が始まりました。現在、この刃物は社主が代わり製造・販売とも中断されて入手できない状態ですが、あらかじめ先端をサイド・グラインドという砥ぎ方で砥いで、届いた瞬間からよく切れるだけでなく、長切れする特殊鋼を使ってあり、鉛粒を詰めた軽合金製パイプハンドルとの相性もよく、刃物台に置いて、旋回する木材に触れた瞬間から安定して切削できるという風で、グレーザー社の直径13mmや16mmのボウル・ガウジが私たちの良きお手本となりました。社主のグレーザー氏は、材質に長切れする特殊鋼を採用しただけに留まらず、刃物を砥ぐためのグラインデング・ジグ(治具)やグラインデング・ホイール(砥石)についても技術的な紹介してくれましたので、その影響はカナダのワンウエー社の#2291や#2480といったグラインデング用品に反映され、世界中のウッドターナーに活用される定番商品になりました。2008年(1年前)には#2291と#2480の活用を容易にするラプターという型板(テンプレート)がアメリカのウッドターナーズ・カタログから発売され、適切な形状に短時間に砥ぎ直せる手段が一段と身近になりました。一方、スウエーデンのトルメック社から水研磨グラインダーが1973年より発売され、木工旋盤用ガウジ用のグラインデング・ジグも開発され、サイド・グラインド研磨をできるようになり、2007年に開発されたターニング・ツールセッター(TTS-100)の併用により、上述のラプターと同様にガウジのサイド・グラインドを誰でも短時間にできるようになりました。また、2009年にはトルメック社の上述のグラインデング・ジグを通常のハイスピード・グラインダーに流用できるようなアクセサリー(BGM-100)まで発売され、購入したボウル・ガウジ等を実際に使える形状にまで形を変更する時間を短く改善が続けられています。一方、日本のアマチュア・ウッドターナーは上記のような最適な道具が発売されても実際に見ることも試すこと機会もないからかもしれませんが、自己流や誰かのマネを続けて混沌としている人が多いようです。通常のハイス材の刃物では連続使用で30分で刃物は切れなくなりますので、
切れなくなった刃物では何をやっても上手く進みません。ガウジを苦手にしない工夫はグラインデング・ジグ等を併用して適切な形状で切れる刃物を常備する手段を確保することが第一です。

  刃物台は傷ついていないか?
 つぎに刃物台を見直してみましょう。ガウジで安定して木を削るには刃物台なしにはできません。刃物を刃物台上を滑らせて木を削るのに、刃物台上に傷や凹凸があればスムーズに刃物を操作することは適いません。ヤスリを使って傷や凹凸を除去し、途中でひっかからないいように蝋などを塗り、使用しない間に錆ないように保管時には防錆油を塗布しておきましょう。刃物台を使用するときは、切削する箇所になるべく近くに刃物台を移動して固定し、刃物のベベル(研削面、シノギ)が木地の切削面にフィットするような高さに刃物台の高さを調節してください。切り屑の形状や連続性を観察すると、刃が切れているかや切削面が良好か否かを判別できます。螺旋状にねじれた切り屑がでているときは、木端でも木口でも良好な切削面が続いている証ですが、粉が出ているようなら刃物は切れなくなっている印です。

   刃物を刃物台上でどう支えているか?
  ガウジという刃物の特徴は、刃物台に接する部分の形状が丸棒やプラス円弧になっていることで、比較的スムーズに動かせる一方で、刃物の水平軸回りの角度は刃物を握っている人次第だという点です。初心者では夢中になっているので、刃物に刻まれた溝(フルートと呼ぶ)が真上になっている場合を見かけます。これではスクレーパー(前述のカエリで切る刃物)と変わりがありません。残念ながら、刃物台と刃物の接地点が直上ならまだいいのですが、ずれてしまったときは、突如としてキャッチ(刃が木地に食い込んでしまう事故)してしまいます。とがった突っかえ棒を旋回する木に当てているのと変わりがありません。突っかえ棒ではなく、連なった切れ刃に沿って連続的に木がはがれて流れて行くようにするには、水平軸回りの角度を30~60度の適当な角度で保持したまま、刃物を水平方向に移動しなければなりません。注意を要するのは、削り始めと削り終わりで、前者では削る厚さが薄過ぎれば切れ止んでしまうし、厚過ぎれば刃物が木地に食い込んでしまい怖い思いをするでしょうし、ベベル(切れ刃を含む研削面、シノギ)が旋回する木地に支えられていなければ刃物を安定した軌道で維持できません。遠心力で刃物は自分の意思と違って、外側に弾き飛ばされてしまいます。どこで削り終わるかでも、早すぎれば不足が出るし、遅すぎれば余分なところまで削ってしまうことになります。キレイな切り屑がでてきたら、その木地と刃物の角度を維持しつつ、刃物を水平方向に移動しなければなりません。それを実現できるのは旋盤ではなく、人間の方で、腰から下の水平方向の動きになります。太極拳をしているようなゆっくりした水平方向の動きが求められます。腰から下の水平移動を伴わないで、腰を中心にして上体だけで刃物を操作すると木地はマイナス円弧状に削れるのみです。
 

2009年08月19日

シャープニング(刃物砥ぎ)の必要性

 安物買いの銭失いかも?

 「ウッドターニング」を始めたのは40歳になってからですから今からもう14年前になります。長女は今春、社会人となって働くようになりましたが、彼女がまだ小学校に入学する前で、学習家具を買ってやるより、手づくりで椅子や机をプレゼントしてやろうかと「趣味の木工旋盤」を始めました。現在は廃刊になりましたが、当時は趣味の木工雑誌が数誌あって、手づくり木工事典という季刊のアマチュア木工家向けの雑誌で推薦されていた木工旋盤と、アクセサリーの刃物8本セット、旋盤用スタンドを買いました。3点で合計約10万円で、代金先払いし商品は半年たって届きました。8本1万円という刃物は当時でも廉すぎる印象でしたが、ほかに選択肢もなありませんでした。現在私が販売しているイギリスのハムレット社の刃物(高速度鋼、ハイス、HSS,M2材、普及品)は1本当たり5千円ほどです。

 30分で切れ止む!?

 初めて削ったのは栗の角材で、机の脚の部分でした。1本目より2本目、2本目より3本目は上手くいくと思っていたのですが、刃物が切れなくなるからでしょうか、材木が緻密でないからでしょうか、切削面はむしれるようになり、「こりゃ、だめだ!俺は何にも知らないんだ!」と気づきました。ハイス材という触れこみでしたがもう少し低級な合金鋼という種類でした。ウッドターニング初心者の多くが現在でも理解しないのはシャープニング(刃物砥ぎ)の重要性でしょう。連続使用で切れなくなる時間は想像以上に短いのです。ハガネで5分間、ハイス(HSS,高速度鋼)の普及品(イギリスのM2材)では30分間です。ハイスの高級品(ASP2060材)でもM2材の4倍程度ですからせいぜい2時間が限度です。1日に何回も刃物を砥ぐ必要があることを分かっていても、実行しないから進歩しないのかもしれません。砥がないで済む刃物も昨年販売が始まりました。アメリカ製でシーアイワン(12,600円)という刃物は替刃式で耐久性抜群のカーバイド材で、1枚1,500円(R4)の替刃で20個の作品が削れるほどです。切れる刃物というのはなんて素晴らしいかを再発見させてくれました。後述するスクレーパーではなくチゼル(chisel,ノミ)や鉋(planer,カンナ)に相当する刃物です。21世紀まで生き延びて良かったって感じです。

 ヒゲのような切れ刃? 

 初めて砥いだのはスクレイパー(scraper,掻き落とす道具の意味)で、一番簡単に砥げる刃物でした。刃物といっても刃物らしくない形状で、顔に生えるヒゲのような「カエリ」(英語でいうとbarr;日本語でもバリと云って分かる場合があるが、辞書には普通載っていない)が切れ刃になって木の表面を掃くように剥く軽切削に適し、切れ刃は摩擦熱や衝撃ですぐ摩滅してしまうため、重切削の粗削りには不適な刃物です。カエリを生成するにはいろいろな方法がありますが、両頭グラインダー(bench grinder)で旋回する研削砥石(grinding wheel)に刃物台上で板状の刃物の上端面を削ると砥石の粒で押しつぶされて硬くなったヒゲ状の切れ刃が発生します。

 
 

Copyright (c) 2006. Woodturning Jo-zu. All rights reserved.

ウッドターニング上手 〒433-8111 静岡県浜松市葵西6-1-43
TEL 090-7037-5124 鈴木直人 FAX 053-437-1225 木工旋盤同好会
E-mail woodturning@hkg.odn.ne.jp