木工旋盤同好会通信

無料木工旋盤体験

顧客から「木工旋盤同好会」の一番の特色は「無料木工旋盤体験工房」だ、マンツーマン指導だと指摘されました。元々はこんな履歴があります・・・木工雑誌に2年半連載を書きましたが、興味を持って読んでいただいているのはありがたいものの、実地で皆さんと実習する機会があり、肝心の中身が理解してもらえていないことを痛感しました。当時はVHSビデオが普及していたので、自ら撮影して映像と音声を吹き込んだウッドターニング・ビデオを24種類も制作して、世界のウッドターニングを紹介しました。こんなに多彩なジャンルがあるのか?と一層興味深く見ていただいたようで、およそ1種類あたり200本のコピーを配っていました。しかし、・・・・ビデオを見ていただいている方が一向に上手くならないという欲求不満や自分の伝達能力のなさに、実際に個別指導してもダメなら自分は教える能力がないのかもしれないと・・・背水の陣で個別指導を初めました。初めは1対1、2対1とマンツーマンで上手くなっていくのを安堵し、段々、7対1とか、最大20対1とかいう修羅場もありました。本来、文字や写真で分かるものでも、映像ビデオを見て分かるわけでもなかったのかも知れません。刃物で木が連続して切れる体験は、材木の種類や切れる刃物の現物があって、どういう順番で削ってつかみ換えていくかという共通の成功体験を通じて理解が進んでいくのかもしれません。現在は、カーバイド材のよく切れる刃物を販売することを通じ、よく切れることの成功体験を通じて、一般のハイス鋼の刃物でも砥ぐことを奨励して両方とも適材適所に使いこなせる自由度を広めたいと思っています。どういう風に砥ぐと目的を果たせるのかは、多少理解するのにむずかしさもありますが、特殊な才能が必要というわけでもありません。人間は手足を動かし、言語を発することで頭脳を働かせ、また手足に返って今までできなかったことができるようになるようです。生涯わずか5%しか使わない云われる能細胞を使わないままではもったいない気がします。好きなことなら食事するのも忘れるでしょう。成功体験を一緒に積み重ねましょう。皆さんとお会いする日を楽しみにしています。

ウッドターニング・ビデオの見方

 2009年10月20-21日に東京、代々木で撮影された講習会のDVDが出来上がってきたというので拝見しました。2日間にわたって収録されて十数時間の講習をどこを残して、どこを削るかという大変な編集作業が終了し、市販用2枚組のデレクターズ・カット版と、非買品5枚組のオリジナル版を頂きました・・・主演はイスラエルのエリ・アヴィセラで、私は企画、大道具・小道具と日本語通訳などを担当。カメラも編集も大変だったと思います。カメラマンは透明人間になれればいいのですが、実演者と参加者の間で姿も見えるため、いい画像をとろうとすれ実演者の視線を遮りもし、会場で見ている参加者からも「みえないぞ!」と叱られる位置にいなければなりません。勿論、クローズ・アップ画面を提供できることは参加者にもビデオ視聴者にもメリットがあります。自分は服にマイクをつけてもらい、騒音の中で自分の声が聞こえないのではという不安を2日間感じながら、DVDを拝見し、「マイクはいっている。よかった。よかった」から、「俺ってこういう声?。髪の毛薄くなったなあ。腹出てきたなあ。エリさんも髪薄くなってきたなあ。」などと講習内容に関係ないことも客観しつつ、実演の進行役をやりながらエリさんの実演を参加者に理解してもらえるようにと、よくも10時間以上も実演者、カメラマン、参加者各位の熱意を今更ながら感じました。しかし、なんのためにビデオを見るのか?と自問してみて、「忘れていることを思い出す。」「上手い人と自分とはやり方のどこが違うのかしら?」とか、「何を省略して、何を伝えれば、DVD購入者は満足してくれるのかしら?」とか「ウッドターニングの何を伝えられるんだろう?」とか、「練習してもらうことが上達の一歩だよな!」、「練習する気になる作品の発掘がもっと必要だよな!」。・・・「ウッドターニング・ビデオの見方は人それぞれって云えばそうだけど???」

30年ぶりのチェンジ・・・超硬合金の替刃式刃物について

 2009年の新商品の中で特筆したいのが超硬合金の替刃式刃物。もともと、超硬合金は1923年ドイツで開発され、1925年に開催されたパリ万博に切削用バイトとして出品されました。会場では切削速度があまりに速いのでパリっ子はビックリしたそうです。超硬合金と云う言葉は現在では色々な種類があり広い範囲を指すので、もう少し狭い範囲でとらえるとWC-Co(Wはタングステン、WCは炭化タングステン。Coはコバルト)。高融点、高硬度が特徴のタングステンは工具に適した金属で、炭化タングステンに靭性の高いコバルト粉末を粉末冶金法と云う、金属(混合)粉末で整形・焼結してつくります。日本では金属旋盤で、替刃用バイトに使われ、商品名で「タンガロイ」(タングステンとアロイ・「合金の意味」の合成語)として超硬切削工具として知れわたっています。また、木工用には丸鋸のチップソーや、カーバイド・チップ付帯鋸としてキレイに切れる、耐久性があるという印象の製品があります。
 木工旋盤用刃物は1980年ごろにハガネからハイスピード・スチール(ハイス、HSS、高速度工具鋼)に切り替わり、それまで5分間で切れなくなるのが30分間切れるようになり、職人さんが5分ごとに研いで使っていた伝統的なろくろから、趣味人が使える程度の30分ごとに研げば済む現在の状況に至っています。ハイスもバナジウム等を含有させた耐久性の高い特殊鋼を使用し、普及品(M2,SKH51)に比べ4倍の長切れする刃物等にも人気がありますが、30分の4倍の2時間切れ続けるようになっても、一日に何回も研がなければ切れ止んでしまうことには変わりなく、刃物研ぎ(シャープニング)は欠かせません。しかしながら、刃物を研いで常に切れるように維持するには、グラインダーやジグなどの機器の費用や安全に使う知識も必要で、多くの方がなかなかクリアできないようです。
 2009年になって、およそ30年ぶりになりますが、木工旋盤用刃物の歴史が塗り替えられようとしています。アメリカで超硬合金の替式刃物が普及しはじめました。耐久性はハイスの普及品にくらべ25~30倍優れています。替刃式で周囲、4辺使えるので合計100倍長く切れる性能が魅力です。

刃物研磨用グラインダーへの認識のズレ

 ウッドターニングに使う刃物研磨用グラインダーについて、アメリカと日本では認識にズレがあるようです。アメリカの有識者は直径8インチ(20cm)を使っています。刃物をフリーハンドで砥ぐ人は通常の半分ほどの低速回転数のいわゆるハーフスピード・グラインダーを使います。刃物を研磨用治具を使って砥ぐ場合は速いスピードのグラインダーを使うことも可能になりますが、フリーハンドでハイスピード・グラインダーで砥ぐことは焼損の危険が高いので避けて通るでしょう。一方、日本では直径20cmのハイスピード・グラインダーは工業用として販売されていますが、直径20cmの低速回転数のハーフスピード・グラインダーはほとんど販売されていません。(木工旋盤同好会では販売しています。)入手しやすいホームセンター等では直径15cmのハイスピード・グラインダーのみが販売されています。木工関連通販では直径20cmのハイスピード・グラインダーと、直径15cmのハーフスピード・グラインダーは販売されていますが、刃物を温度を上げずに軽快に研ぎなおす機能は残念ながら備わっていない製品なので、刃物研磨はいつになっても混沌としています。ホイールの直径は大きな方が刃物の温度を上げずに砥げます。スピードが遅いグラインダーには直径が大きなホイールが適します・・・軽快に、迅速に砥ぐためには。直径15cmのグラインダーにカバーを外して直径の大きなホイールをつける猛者もいます。危険ですし、廉いグラインダーは十分なパワーがないため、一定の回転数に達するまで時間がかかるだけでなく、研磨すると回転力が極端に落ちて砥ぐ力を落としてしまいます。まともなグライダーを入手しないと刃物砥ぎはイライラするばかりです。30万円の木工旋盤を買う人が3万円の刃物研磨用グラインダーを買わないのはどうしてなんでしょう?

一番のおすすめは何?(Best Buy)という質問

 代々木で行なわれた講習会でエリ・アヴィセラさんが5種類の深掘り用刃物(Deep Hollowing Tools)を実演して見せてくれました・・・Kelton Hollowers,Hamlet Little Brother,Andre Martel Hook Tools,Oneway Termite,Hunter Carbide Hollowing Tools・・・須田さんからエリ・アヴィセラさんへ。「一番のおすすめは何?」(いわゆるベスト・バイの商品はどれか)という質問があり、エリさんの回答を注目しました。エリさんはどれも一長一短があって、どれが最高とは回答してくれませんでした。一番のおすすめめは何?といった質問って購入者として共感できる一方で、実演者の立場から考えると、5種類の使い方、研ぎ方を見せたのだから、視聴者が各自判断する役回りなのでは・・・という見方もできるなと感じました。エリさんはどこかのメーカーに頼まれて特定の刃物を売るために実演販売にはるばるイスラエルから来ている訳ではないし、また、一方で私たちは利害を超えた経験豊富な人から適切な道具を教えてもらいたい。まず、どれから買えば間違えない選択になるか?。5種類の中から選ぶっていうのは選択肢がありすぎるのかもしれないし、粗削りにはこっち、仕上げ削りにはそっちという役割の違いもあるでしょう。プロにとってはどれも簡単に使えるのかもしれないし、我々にとってはどれもとっつき難い刃物に見えたのかもしれません。私はどうするかと云うと、Hamlet Little BrotherとOneway Termiteの2種は使っているし、Hunter Carbide Hollowing Toolsはまだ使ったことはありませんが別の会社のカーバイド材替刃のCi0やスーパーカット刃物など30~60度斜めにハイス材の円板状の刃が取付られているシアー・スクレーパー刃物の扱いやすさを経験しているので、砥ぎの不要なカーバイド材替刃の付いたシアー・スクレーパーであるHunter Toolsに触手が伸びてしまいます。経験に照らして性能の想像がつく・・・柳の下に2匹目のドジョウがいるような気がして。Kelton Hollowersはいわゆる「アリゾナの爪楊枝(4.8mm幅のカッター・チップ)」タイプの刃物で、スチアート・ツール、ジョン・ジョーダンなどのホローイング・ツールより小型のクリス・ストット(直径6mm)に近く、少し太い直径8mm(その上は13mm)の幅の狭いスクレーパータイプの刃物で、粗削りには適すると思います。

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